
茨城県鹿嶋市に鎮座する鹿島神宮。その西側にひっそりと、しかし堂々と佇むのが「西の一鳥居」です。海に向かって建てられたこの巨大な鳥居は、まさに“水の上に立つ神域の門”。日本最大級のスケールを誇り、訪れる者すべてを神聖な空気で包み込みます。
鹿島神宮には東西南北、4つの「一の鳥居」がありますが、この西の一鳥居はとりわけ印象的で、観光客のみならず、写真愛好家や神社巡りファンの間でも“必見”とされる名所です。
この記事では、そんな西の一鳥居の魅力を、歴史・文化・景観・見どころなど、さまざまな側面から詳しくご紹介します。
鹿嶋神宮の西の一鳥居とは?
鹿島神宮の西の一之鳥居、古くは大船津と呼ばれたこの地は、水運を通じて経済や文化が栄え、神宮への参拝者が最初に訪れる重要な場所でした。江戸時代には歌川廣重の浮世絵にも水上鳥居として描かれ、その美しい姿は多くの人々に愛されてきました。
現在の鳥居は平成25年6月に建て替えられたもので、新日鐵住金製の丈夫な鋼材が使われています。その高さは約18.5メートル、幅は約22.5メートルと、以前の鳥居の2.5倍もの大きさになり、壮大な景観を作り出しています。
一見すると海上に鳥居が浮かんでいるようにも見え、その光景は見る者の心を一瞬で奪います。その力強い佇まいは、長い時を経てもなお、訪れる人々に感動を与え続けています。
かつては、海路で鹿島神宮を目指す人々の玄関口として機能しており、「西の一鳥居をくぐることが、すなわち神域に入る儀式」であったとも言われています。
神聖さと歴史が交差する空間
鹿島神宮の主祭神は、武の神として名高い武甕槌大神(たけみかづちのおおかみ)。日本神話にも登場する力強い神様です。
この神を祀る神宮の入り口に建つ西の一鳥居には、「厄除け」や「勝運祈願」、さらには「海上安全」のご利益があるとされ、古来より多くの武士や漁師、航海者たちが祈りを捧げてきました。
特にこの西の一鳥居は、地上に立つ鳥居とは異なり、水中に建立されているため、常に自然と共にあります。満潮と干潮によって景観が大きく変わり、まるで生きているかのように表情を変化させるのです。
鹿嶋神宮の西の一鳥居は夕日が映える
西の一鳥居が人気の理由のひとつに、その「撮影映え」する圧倒的な美しさがあります。特に日没の時間帯は格別で、夕日の名所にも選ばれているほど。
太陽がゆっくりと霞ヶ浦の水平線に沈むにつれ、鳥居のシルエットがくっきりと浮かび上がり、空と水面が金色に染まっていく――まるで神話の一場面のような景色が広がります。
おすすめの時間帯は、日没の約30分前。空が橙から赤へとグラデーションを描くその瞬間に、西の一鳥居を収めた一枚は、まさに一生モノの写真になるでしょう。
夏には近くで開催される花火大会が鳥居を幻想的に照らし、秋には紅葉、冬には澄んだ空気の中でのクリアな景観が魅力。四季を通じて、訪れるたびに違う表情を見せてくれる場所です。
訪れる前に知っておきたいこと
西の一鳥居は24時間見学可能ですが、照明は設置されていないため、夜間の訪問には注意が必要です。専用の駐車場はありませんが、少しの間なら車を止めれる場所ならあります。
ただし、地元の方の生活エリアなので、そこはわきまえた上で、少しだけお借りするという心がけが大事かと思います。
水辺に近づくと、足元が滑りやすくなるので注意しましょう。神聖な場所でもあるため、大声で騒いだり、無断でドローンを飛ばすなどの迷惑行為は控えましょう。
周辺スポットも充実~一日かけて楽しめるエリア
西の一鳥居だけでなく、周辺にも魅力的なスポットが数多くあります。国宝にも指定されている鹿島神宮本殿、威厳ある楼門、奥宮など、境内をじっくり歩けば半日はあっという間。参道沿いには土産物店や地元グルメが楽しめるお店も立ち並び、旅の楽しみが広がります。
また、少し足を延ばせば「鹿島灘海浜公園」や、Jリーグ・鹿島アントラーズの本拠地スタジアムもあり、自然とスポーツの魅力が共存するエリアです。
おわりに
鹿島神宮の「西の一鳥居」は、ただの観光スポットではありません。それは、古代から続く信仰と、自然が生み出す美の結晶です。水面に浮かぶ鳥居の姿は、私たちに“見えないものを感じる力”を思い出させてくれるようです。
ぜひ一度、西の一鳥居から鹿島神宮へと続く神聖な道を歩いてみてください。きっと、心が静かに整っていくような、そんな体験が待っているはずです。